TEXT:小平一平
サニートラックの魅力はカスタムにあり!…と言いたいところですが、ノーマルもなかなかの趣きがあるクルマなんです。
1967年にデビューした初代サニトラは、コロッとしたフォルムが愛らしいピックアップトラック。エンジンはA10型の1000㏄。
1971年にモデルチェンジされたB120型のボディは、無駄な曲線を廃したスクエアなデザイン。これが「懐かしいけど古すぎない」と今でも感じさせる絶妙さなんです。「ジャパニーズ・ミニマリズムの体現者」なんて称するのは少し大げさですかね?
どの角度から見ても「機能を追求することがデザインだ」と言わんばかりの直線美。そして荷台にはロングとショートの2タイプが用意されているのも嬉しいポイント。
個人的にはロングベッドがやはり好き。ロングが「クールトラック」なら、ショートは「キュートトラック」といったカンジ。どちらも取り回しが良く、狭い農道や商店街での配達に最適化されているんですよ。最小回転半径はロングが4.6m、ショートが4.1m。冗談ではなく台車のごとくクルックルと回ってくれるんです。街乗り最強トラックですよ、マジで。
室内空間にはムダなモノ、いっさいなし!
インテリアもシンプルそのもの。最近の車は「居住空間」なんて呼ばれてますが、サニトラの場合は「男の仕事場」。余分な装飾や今どきのガジェットは一切なし。タコメーターも時計もなければ、もちろんクーラーもない。でもそれで十分なんですよ。サニトラに乗ると、いかに今のクルマが過剰装備でメタボになっているかがよ~く分かります。
タコメーターや時計なんかは後付けできるし、クーラーもお金を出せば吊り下げ式を装着可能。でも、クーラーを付けるとコンプレッサーにパワーが取られてしまい、走りが少し重たくなるというデメリットが。あと値段ね。本体と取り付け工賃で20万円以上はかかります。
ローテクエンジンだけど、味わい深い
サニトラックのエンジンは、B120型で言えばA12型エンジン――1200㏄の直列4気筒OHVです。現代の感覚からすると控えめなスペックですが、その信頼性とメンテナンスのしやすさは現場で真価を発揮。言うならば「サニートラックのエンジンはポニーであって、決して馬ではない」。つまり、パワーは控えめでも、扱いやすさと耐久性は申し分ないってこと。OHVというローテクエンジンだけど、しっかり回ってくれるし、商用車なので下のトルクもあるので低速走行ももちろんOK。そして何より、旧車ならではの味わいがある。ここがサニトラのエンジンの一番重要なポイントかもしれません。
最近はクルマもバイクもノーマル回帰の傾向があります。サニトラも、かつてはカスタムベースとして扱われてきましたが、これからはノーマルでサラッと乗りこなすのも粋かもしれません。スーパーカブやサーフボードを荷台に積んで海沿いを走ったら、気分はもう「稲村ジェーン」っす。