TEXT:小平一平
青空の下、弾けるように輝くイエローのボディ。まるで昔の洋書から飛び出してきたかのような、ゴキゲンなカリフォルニアルックの240Z。
このクルマを見たとき、正直「やられた!」と思った。Zのカスタムといえば、太いタイヤを履かせるために前後にオーバーフェンダーを装着し、ギリギリまでローダウン。そんな戦闘的なスタイルが「Zカスタム」の定番だ。それに対して、この240Zときたら、「シャコタンで不良を気取ってどうするの?」と言わんばかりの車高の高さ。
でも、このノーマルの車高がバツグンに似合っているのだから、たまらない。ボディの色もさることながら、まばゆいほど光を反射する前後のメッキバンパー。そして、ポリッシュされたエンケイディッシュホイール。これが、より一層アメリカンな雰囲気を醸し出している。
この240Zは、約2年前に埼玉県にある水上自動車工業で撮影させてもらった1台だ。このときは、フルレストアしたGT-R仕様のケンメリの取材で伺ったのだが、「こんなのもあるよ!」と見せてもらったのがこのクルマ。
水上自動車工業といえば、そのレストア技術の高さから全国から問い合わせが殺到しているプロショップ。特にハコスカやケンメリ、そしてフェアレディZといったL型エンジン搭載の旧車を得意としている。ノーマルのフルレストアから、ドラッグレース仕様のゴリゴリなチューニングマシンまで幅広く対応する技術力がウリ。だからこそ、この240Zもツボを押さえたレストアが施されている。
エンジンルームはフルノーマル。コーションラベルも新品に貼り替えるという手の込みよう。ノーマル仕様だが、エンジンのヘッドカバーはポリッシュされ、配線も丁寧に処理されている。もちろんエンジンルーム内部も、ボディと同色にペイントされている。
コックピットもフルノーマル。ただし、すべてをリプロパーツで新品にするわけではなく、ハンドルやシフトレバーなど、直接手に触れるパーツは当時モノを組み合わせているのがポイントだ。3連メーターの一番左には時計、センターコンソールにはラジオも搭載されている。
エンジンをはじめとした機関、そして足回りもすべてレストア済みなので、トラブル知らず。見た目の通り“ゴキゲン”な走りを見せてくれる240Z。走りに特化したカスタムもいいが、ノーマルのよさを引き出す、こういったスタイルは逆に新鮮。肩の力を抜いて付き合えそうな1台だ。